プロジェクトレポート
2018年04月26日 Thu
わたくしが、建築を志そうと決めた家が、壊されます。
妻の叔父の家「西荻の家」です。
先日の日曜日に、有志の方や「木組ゼミ」の受講生とお別れ見学会を開催しました。
この家の設計者は、小川行夫さん(88歳)です。わたしが若い頃、最初に師事した先生です。
元大工棟梁で、建築家協会の会員でした。
小川さんは、終戦の年、13歳で大工を目指し20歳のときに肩を壊して設計に進んだといいます。
28歳のときに、妻の家も設計しています。この家は、それから数年後の油の乗り切った頃の作品です。
わたくしが26歳のときに結婚を報告した宴会の帰り、義理の叔父に招かれて、この家の玄関に立ちました。
その時の衝撃は今でも忘れません。
低く長い軒をくぐると、太い柱に梁、梁の向こうに庭のツツジが見えます。
厚い床板が、無造作に切りっぱなしの小口を見せて、客を迎い入れようとしています。
あまりの素材感と美しさに、慌てて靴下を脱いで、裸足で上がりました。
切目縁の向こうには、庭から伐ったばかりの桐の木を床柱にした茶室。後に葉が生えたといいます。
大きな自然石の手水。月見台に虹のように掛かった古材の丸太が印象的でした。
リビングに入る階段は、無垢の梁の切りっぱなしが数段。
床から浮いた家具。梁の梁の間にフチ無しではめ込まれたガラス。その隙間から入るかぼそい光と、室内の梁の織りなす影。
廊下の行き止まりには、明り取りのはめ殺し窓。そのガラスに直に、戸当り無しで閉まる引き戸。
浮造りされた合板の切りっぱなしの小口はそのまま壁の見切りになって、木組の和の家なのに、モダンな納まりとバタ臭い素材の使い方。
繊細なディテールと、豪胆な架構。外観は、民家のような真壁の土壁。低い塀は元の家の瓦。
その頃、都市計画を仕事にしていましたが、この家を見て建築を作りたいと思いました。
私の人生を変えた家です。
この家のすべてが、いま、わたしつくっている建物の原点「木組のモダニズム」なのだと改めて確信しました。
義叔父は「もうじゅうぶん、この家と庭を楽しんだよ」といいます。ゆっくりと家も庭も噛み締めた、お別れ見学会でした。
娘のFBでは、さらにラブストリーも?
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