プロジェクトレポート
2018年01月17日 Wed
1995年1月17日の未明に巨大地震が阪神淡路を襲いました。
それまでに体験したことのない地震の大きさに、当時40歳のわたくしは大きな衝撃を受けました。
高速道路が倒れたり、木造建築ばかりか大きなビルが倒壊し、密集地が火災に見舞われました。
まるで地獄を見るような、ニュース映像は今も鮮明に蘇ってきます。
6434人の人命が失われ、うち8割の5000人近くが建物や家具の下敷きになり亡くなりました。
わたしの設計人生は、23年前の今日から始まったと言っても過言ではありません。
昔から地震に強いと聞かされてきた日本家屋の耐震性が疑問視され、わたし自身の作っている建築に再度向き合うようになった日です。
しばらくしてから現地を訪れ、被害の概要を見て回り、心に決めたことが有ります。
それは、大きな地震に見舞われたとしても、「生存空間を確保する」建物をつくることです。
行き着いたのは「貫」の入った民家のつくりかたでした。
倒壊家屋の中で「貫」が効いて粘り強く残った民家を見たときの感動が、そのままわたしの設計方針となりました。
古来から先人たちの実践してきた、柱に「めり込み」大きな変形をしても、倒壊を回避する「貫の効果」を実感したからです。
その後の国の実大実験、2007年から2011年のEディフェンスでも「貫の粘り強さ」は実証されました。
2016年4月に起きた熊本の地震のように、繰り返し揺らされる地震も「貫の復元力特性」は効果的です。
わたしが「貫はやめてはいけない」をモットーに、民家に学びながら現代住宅を作り続けているゆえんです。
古民家をノスタルジーとして語るばかりでなく、災害に対する知恵と工夫の答えを内包している建物として考えてゆきたいと思います。
伝統的な日本の家は、本来の安心安全で豊かな暮らしを送ることの出来る建築であると考えています。