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2013年09月03日 Tue

住まいから寒さ暑さを取り除く

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3.11以降、エネルギーの問題から、省エネを考えない家づくりは成り立たなくなってきています。

国の省エネルギー基準も、2013年10月改正に向けて動きがあわただしくなってきました。

住まいづくりにかかわる人たちの間では、いかに燃費の良い家をつくるのかが課題になっています。

そこで、表題の「住まいから 寒さ暑さを取り除く」という本が出版されました。

北海道大学名誉教授・荒谷登先生の著書です。

副題には、採暖から「暖房」、冷暴から「冷忘」へ、と書かれています。

北海道で1976年から2010年までに発行された5冊の本を再編集されたものです。

この本に書かれている住まいの温熱環境の話は、本州と北海道の気候の違いを超えて、つくり手や住まい手に是非読んでいただきたい内容です。

わたしたちが日頃考えている暖冷房の考え方が、一変するでしょう。さらに、日本の伝統的な建物の知恵や工夫が見直されるでしょう。

例えば、いろりやこたつは採暖の代表的な例であり、暖房は、「房」といわれる空間を、温めるというより「ある温度に保つ」ことが目的だといいます。

そこでは寒さを持ち込まないことが重要になります。つまり断熱が主役となります。

また、日本の民家は通風を大切にしていますが、室内の発生熱を上方に排出する工夫である、通り庭、煙出し、透かし欄間、隙間の多い竿縁天井など、上方開放が重要であり、熱容量の大きな土間は冷却面として働いていた等、民家と自然エネルギーの関係がよくわかります。

これからの家づくりの開放性を楽しむには、冷気流が起こらない室内のつくり方が大切な点など。空気の性能を知り尽くした先生の示唆に富む話ばかりです。

さらに日本の伝統の持つ良さに着目して、家づくりをすることが大切であり、欠点の克服ばかりに科学の目を向けては、見失うことが多いことなど。荒谷哲学といえる内容です。

この本は名著だと思います。これからのエネルギーを考える上で、しっかりとした羅針盤を得た気がします。