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2013年01月25日 Fri

歴史的な民家の行方

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全国に残る歴史的な町は、文化庁の伝統的建物群保存制度によって保存されています。いわゆる伝建地区と呼ばれる町並みです。

しかしながら、そのような保存制度に守られた町の建物でさえ、改修や増築の折には現行の建築基準法に適合しない建物とみなされてきました。 むかしながらの日本の大工技術で作られた伝統的な家が、既存不適格という不名誉な名前で呼ばれているのです。

歴史的な町並みに建っている多くの民家は、明治時代もしくはそれ以前に建てられた家々です。その多くは伝統的な木造建築で、石の上に載ったいわゆる石場建ての工法です。現在の法規の基礎との緊結という条件が、石場建てでは適合していなかったのです。そのために、文化財となっている木造建築の多くは、耐震改修に窮していました。

しかしながら、昨年度まで実施された、国土交通省の伝統的木造建築の設計法作成委員会において、振動台で揺らされた実大の建物は、石場建てで巨大地震に耐えました。実験棟は、歴史的な建物に多く見られる足元フリーの木造二階建てでしたが、実験の結果、大きな破損もなく、巨大地震をしのぐ石場建ての効果が見られたのです。

この結果は、日本の伝統的な建物のこれまでの常識を覆す大きな出来事ですが、あまり多くの方に知られていません。現在、国土交通省では実験の検証結果を取りまとめ足元フリーの設計法を検討しているところです。

この成果によって、これまで既存不適格と言われてきた歴史的な民家が工法的に見直され、多くの歴史ある町並みに光明が与えられることを願っています。

先人たちが作ってきた歴史的な建物が、最も新しい検証実験で地震に強いことが証明されたことを知っていただくとともに、わたしたちは、民家の知恵と工夫を、これからの家づくりに活かして行きたいと考えます。