プロジェクトレポート
2013年11月18日 Mon
いわゆる中年とは、何歳からを言うのでしょうか?一般的には、45歳からをそう呼ぶと言いますが、大工の世界では、18歳で「中年もの」と呼ばれます。
それはなぜでしょう?
法隆寺大工の西岡常一棟梁の話にも出てきますが、現在鵤(いかるが)工舎の棟梁である小川三夫さんが、高卒で弟子に入りたいと訪ねた折に、年を取り過ぎていると断られたそうです。
わたしも、元大工棟梁で建築家のところに入りたくて訪ねた時に、同じように断わられました。
その時に、「中年もの」だから使えないと言われたのです。わたしが26歳の時でした。中年はいくつからですかとたづねたところ、大工は15の春から弟子入りする。大工の世界では、18才でも中年ものというのだと教わりました。
なんでも15歳からが、人間の身体ができてくるので、そのころでないと大工に向いた筋肉が付かないというのです。さらに、ものの分別が付くかつかないかのころに、親方の価値観を植え付けられるので、物ごとを知り始めてからでは遅いと言われました。
正直、物事を知り過ぎてはダメということに驚きました。それでは一体、大学で学んだことはどうなるのか?と思いましたが、その頃は、職人の世界の徒弟制をよく知らなかったのです。
大工育成塾で教えることになって、ようやくその意味が分かり始めています。
大工育成塾には、伝統構法を学ぼうという若者がたくさん入ってきますが、座学はともかく実務の方では、徒弟制度は厳しいらしく、一般的な勤め人感覚では通らないことがおおくて、やめてしまう子がたくさんいます。
そういうわたしも、大工棟梁のところでは、短期間しか持ちませんでした。知識が付き過ぎて、所長の言うことに疑問を感じてしまったのです。やはり「中年もの」だったのでしょう。
しかし、今では中年から学んだ技術ながら、真摯に家づくりに向かい取り組んでいます。いつの間にか、若い人たちに教える立場になっています。「中年もの」もいいじゃないかと思える今日この頃です。