2013年02月08日 Fri
いま、全国各地の山では、植林できる林業の仕組みが壊れようとしています。
この窮状を打開しようと、静岡から天竜TSドライ協同組合の理事で原木屋さんと製材所の2名の方が当事務所に、木の値段設定のご相談に見えました。
わたしたちのつくる木の家は、山との共存共栄を目標としています。家づくりをしながら植林・育林ができる仕組みが理念です。
今回、心配は2つありました。
① 現状の価格で、植林・育林費用が山に還っているのか?
② 住まい手の方たちに、大きな負担がかからない妥当な価格帯は?
昨日、わたくしが代表理事を務める一般社団法人ワークショップ「き」組の仲間たちと、山の人たちを交えて、緊急の会議を開きました。
一般的に木の値段は、市場で買われた丸太の価格から製材の歩留まりを計算して捻出するとわかりやすいのです。まずは、丸太価格から角材に挽くロスを勘案し、天然乾燥の経費を積み上げてゆくと出荷価格が決まります。
しかし、市場に出てくる丸太価格は、通常セリに掛けられて、値段は一定しません。また、植林から育林までの経費を算出することは難しいといわれ、どの山も費用の検証を行わないことが通例になっています。場合によっては、原木市場に出すと赤字になるといいます。
製材前の丸太になるまでの価格は、ブラックボックスでだれも手をつけようとしません。
そこで、わたしたちは一本の苗木を植えて、下草刈りや、間伐、山から丸太になり市場に運ぶまでの費用を算出してみました。実に複雑で困難な作業でした。
結果は、直接山との取引をしていることが価格の安定につながり、ぎりぎりだが現状の価格で、植林・育林費用が山に還っていることが分かりました。これまで算定した木の値段が妥当で、これからも植林費用を返しながら、山との協働ができることが分かってホッとしています。
今回の会議で分かったことは、提唱していた木の値段は、いつの間にか、わたしたちばかりでなく、多くの工務店や設計者が理解してくれていたことです。少なくとも天竜TSドライでは、これまでも無理な価格を押し付けられることなく営業を続けられたという事実です。
おかげで、2005年に徳島や天竜の山と、わたしたちが取り決めた木の値段の再確認にもなりました。
一方、経費を計算しながらわかったことは、山で働く人たちの賃金が驚くほど低いということでした。つらいことですが、本当にぎりぎりの選択をしながら山は木を伐り出しているのです。これでは、国の補助金に頼るのも無理はないと感じました。
だからこそ、一本の木を大切に使いたい。
何十年もかけて手塩にかけた木は、その価値を表してさらに長く活きてほしいと願った会議でした。